「暗証番号のヒントは?」
地道に1111から番号をいれ始めた彼が言う。
携帯を奪い返そうとした私の両手は纏めて彼の右手に掴まれて、全く身動きが取れない。
利き手じゃない左手で、私の携帯に数字を打ち込む。
そのままいけば、結構序盤で当たるけどね。
「……誕生日」
「誰の? お前の?」
「さあねー。それ言ったらわかっちゃうじゃん。でも貴方、絶対当てれないと思うよ」
「なんで?」
「私の誕生日覚えてないし」
先月、私がどれだけ悲しかったか。
「……ほんとすんません。いつでしたっけ」
本当に、この男は誕生日とかに無頓着だ。
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