それから数時間、二人で取り留めのない話をしていると、突然、あたしの携帯が光り始めた。
マナーモードにしていたから音は鳴らなかったけど、どうやらメールではなく電話らしい。
開くと、姉の名前。
「あ、ちょ、ちょっとごめん」
慌てて席を外し、彼から離れた所で電話をとる。
「―――もしもし?」
『あ、やっと出た。もう9時だけど、何やってんの?』
「と、友達と勉強してて…」
若干しどろもどろになりながら答える。
嘘は、言ってない。
『あ、そーなん? そろそろ帰ってきなよー』
「わ、わかった」
電話を終えて、彼の元へ戻る。
「お姉さん?」
「んー…、早く帰って来いって」
「そっかー、じゃあ帰りますか」
ガタリと席を立つ彼。
君には少しでも名残惜しさというものがないのかね。
「うー」
「…今帰るなら、送っていってあげるけど?」
不満から唸る私を見て、優しく笑って彼は言う。
「……かえるぅー」
全く、彼は私の扱いが上手い。
「よろしい」
彼はそう言って笑うと、ひょい、と私の手から空のカップを取り、自分のと一緒にゴミ箱に捨ててくれた。
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