先生と偶然会って、プラネタリウムに行った、あの日。あの街が通り道っていうことは、学校からどの電車に乗っているのかはわかった。追い込まれた私は、駅でじっと先生が来るのを待った。
「・・・何してんの?」
学校の最寄駅の柱にもたれてぼけっとしていたら、声をかけられた。何人もうちの学校の生徒が通ったけど、私は柱の影にひっそり立っていたこともあって、それまで誰にも気付かれなかった。
「・・・あ、雄也」
「待ち合わせ?」
「ああ・・・うん、まあ・・・そんなところ」
本当は待ち合わせなんかじゃなくて、私が勝手に待ち伏せしてるだけだった。ストーカーまがいのその行動を、とても正直に雄也に話せなかった。
「雄也こそ、なんで駅にいるの?自転車は?」
「もう帰った。行くとこあってまた出て来ただけ」
「そっか。行ってらっしゃい」
雄也は一度改札の方へ向かいかけたけど、私のことをじろじろ見ると、また声をかけてきた。
「本当に待ち合わせかよ」
「え?な、なに?」
「誰と約束してんの?」
「え、えーと、クラスの友達だよ」
「なんでそんな思いつめた表情してんの?」
「え?いや、思いつめてないよ、普通」
雄也って意外と目ざといなあと思った。準備室に通う私を見つけたのも、柱の影に立っていた私を見つけたのも、私の微妙な表情に気が付くのも、なかなか細かいところに目をやっているものだなあと感心した。
「ふーん・・・熱中症にでもなるなよ」
「はい、了解」
「じゃあな」
雄也に手を振って、手を降ろして、ため息をついてから。どれくらいの時間が経っただろう。日の入りが遅い夏だけど、辺りはもうすっかり暗くなっていた。この場を離れたスキに先生が来てしまうと思うと動けなくて、先に買っておいたあんぱんが役に立った。なんだか張り込みをしている刑事みたいだった。
