「なに・・・?」
「男関係じゃ、いつも自分のこと追い込んでばっかりだろ。実際、見てられないよ」
「そんなこと・・・」
「どうしていつも、無理な方無理な方へ行くんだよ」
雄也じゃないみたいだった。いつも他人のことなんてまるで興味ないみたいに振る舞って、人に何か忠告したりすることなんてなかった。私が迷っていても、好きなようにすればと言って、私が泣いていたら、したいようにしたんだから仕方ないだろと言った。いつも感情に任せて人にぶつかっては失敗していた私を、雄也はいつでも仕方ないと言った。お前はそういう奴なんだから。お前が正しいと思ったんだから。間違っているとか、こうした方がいいとか、そういった類の忠告を雄也が言うことはなかった。
「雄也・・・、どうしてそんなこと言うの?」
「なんでって、さすがに、目に見えてるよ」
「何が?」
「無理に決まってるだろ。俺に、言われたくないだろうけど・・・・・・やめとけよ」
ずきんずきんずきん。さらに胸が痛んだ。雄也の初めての忠告は、胸に痛いものだった。頭の中で雄也の言葉がエコーになる。無理に決まってるだろ。無理に決まってる。無理に・・・。
「わかってるよ。いいの、やれるだけやるの。しょうがないじゃん、好きになっちゃうってそういうことでしょ・・・いくら無理でも、しょうがない・・・好きなんだもん」
できるだけ、声を抑えて、冷静を保ってそう言った。雄也はそれ以上は何も言わないで、黙っていた。
「・・・ねえ、雄也にだって、そういう人、いたことあるでしょ?」
「・・・・・・」
「大丈夫だよ、私だって鍛えられたから。・・・勉強は自分でするね。心配してくれてありがとう」
雄也は何も言わなかったけど、仕方なさそうな顔をして私を見た。私は無理だという言葉を払拭するように、雄也の胸をぽんと叩いて、笑顔を作った。ずっと近くにいた雄也が、私を気遣ってくれたのは嬉しかった。だけどこのまま身を引けないよ。空振っても、空振っても、疲れるまで手を伸ばしてみたいんだよ。
