広瀬くんはホットラテ、私はホットココアを頼んだ。そういえば前にも広瀬くんはカフェオレを飲んでいたから、コーヒーよりもミルクの入った飲み物が好きなのかもしれないと思った。
「あったかい・・・」
いれたてのココアを飲んで、私は独り言を言った。広瀬くんは何も言わないで、ラテをかちゃかちゃとかき混ぜていた。それから何分くらい経っただろう。二人とも何も言わないで、飲み物がやたらと早く減った。私が2杯目のお冷をもらって席に戻ったとき、ようやく広瀬くんが口を開いた。
「悪かったな」
「え?」
「入ったばっかだったのに帰るとか言って」
私は首を振った。そんなことはどうでもよかった。もし私が一人であの場にいても、一目散にそこから離れただろう。
「びっくりして、腰抜かした?」
広瀬くんが私の顔を見て言った。私が膝から転んだ時のことを言っているのだろう。話は本題に入るみたいだ。
「う、うん、ごめん、みっともなかったね」
「仕方ないだろ」
「・・・あ、う、あの・・・やっぱり、さっきのは、篠田先生だよね?」
「ああ」
「それと、久保さん・・・だよね、やっぱり」
「ああ」
「その・・・二人は・・・。・・・その」
「付き合ってるよ」
つまり。その後にどうしても結び付けられなかった言葉を、広瀬くんがはいこれと差し込んでくれた。もしかして、もしかしなくても、そうなんだ。そういうことって、現実に、身の回りに起きることだと思っていなかった。
