あの子の好きな子




「おいしかった!」

私もやっと肉まんを食べ終わって、広瀬くんの方を見たら、体が温まったのか、吐く息が白くなっていた。その横顔から目が離せなくて、しばらくの間ぼんやり見つめていた。

「・・・なに」
「広瀬くん、髪のびたね」
「ああ・・・、昔からよく伸びる方」

そうなんだ。広瀬くんは面倒くさがりだし、すぐに伸びても放っておきそうだなあ。

「ねえ、広瀬くん・・・」
「なんだよ、肉まん足りないか」
「あのね、聞いていい?」
「なに」

顔を上げて、隣にいる広瀬くんの顔を見た。広瀬くんも私の顔を見たから、恥ずかしくてまたうつむいてしまった。

「・・・久保さんとは、幼稚園から一緒でしょ」
「・・・・・・ああ」

広瀬くんの気持ちを聞いたあの時から、初めて久保さんのことを話題にした。広瀬くんは、なんでもないよというように、いつもと変わらないトーンで返事をする。

「その・・・いつ頃から、好きだったのかなぁ」

自分で言って、少し胸が痛んだ。広瀬くんの気持ちは自分の中で完全に受け止めていたつもりだけど、口にするとやっぱり少し辛かった。

「14の時」

ごまかされるかもしれないと思ったけど、広瀬くんははっきりとそう答えた。

「14才・・・?どうして?」
「遥香に初めて男が出来た時。ショック受けて気付いた」
「・・・そ、そっか・・・」

広瀬くんは淡々と話していたけど、私はその片想いの長さにショックを受けた。幼馴染なんだから、10年越しの片想いなんていうパターンもあり得たわけで、それよりは短かったけど、それでも3年。私には想像もできない長くて切ない片想いだ。しかも、その間もずっと近くにいたのに。