「顔、肉まんに似てるな」
私をじいっと見つめて、広瀬くんが言い放ったのはその言葉だった。至極真剣な顔をして一言そう言うと、ふいっと私をよけてコンビニに向かって歩き出している。私は一瞬金縛りにあったように体が動かなくて、ようやく広瀬くんの方を向いたと思ったら、広瀬くんは笑ってこっちを見てた。
「早く来いよ」
そう言われて、暴言に対して怒ることを忘れた。うんと言って走ってついて行く私は、頭の悪い犬のようだった。
「広瀬くん、どれがいい?」
「俺は普通の肉まんにする」
結局、肉まんがいいらしい。そういえば広瀬くんの好きな食べ物は「肉」だった。
「あ、お会計待ってね、私はね、どうしよっかな」
「いいよ別に自分で買うから」
「でも、ホチキスのお礼だから」
「だからいいよ今さら。別に、お前の分はおごらないから」
そう言って広瀬くんは早々とお会計を済ませてしまった。広瀬くんの黒い財布も、なんとなくかっこいいもののように見えた。
「私も肉まんにしよ・・・」
コンビニを出てすぐ、ジャングルジムしかない小さな公園のベンチに座って肉まんを頬張った。広瀬くんはあっという間に食べてしまって、まだ半分も食べていなかった私は一人で口をもごもごさせながら喋った。
「秋冬ってさ、ごはんがおいしいよね」
「そうだな」
「今日みたいな寒い日にあったかいもの食べるの、幸せ」
「うん」
広瀬くんが珍しくうんと言ったのがかわいかった。広瀬くんと一緒に買い食いをしてる、この瞬間が嬉しくて、ローファーで無意味に落ち葉を蹴った。
