「・・・なーにそれ?すごい自信だね」
「自信っていうか。言われたことあるから」
「え、そうなの?そんなの他人に言っちゃだめだよ」
辻くんは突っ立ったまま一歩も動かないで私の方をじっと見ていた。なんとなく居心地が悪くて、私はきょろきょろと視線を泳がす。
「言われたのは昔だけど、今もきっと変わってないよ。俺そういうの敏感な方なんだけど、なんとなくわかるじゃん、やっぱり」
淡々とそう話す辻くんを見ていると、加奈ちゃんの好意を良く受け取っていない風に見える。私は加奈ちゃんが大好きだし、辻くんの話が本当だとしたら、今の態度はいい気がしなくて、辻くんのことを少し睨んでしまった。
「・・・付き合ってないの?」
「俺と加奈が?付き合ってないよ」
「・・・今の気持ちもわかってるんなら、真剣に考えてあげればいいんじゃない」
「ねえ、あゆみ先輩。交換条件だよ。教えて、先輩の話」
今日の辻くんは、特別生意気。どことなく威圧的な感じがして、いつもの接しやすさがない。
「別になにもないよ。ねえ、もう部室戻ろ」
「俺、あゆみ先輩に興味あるんだ」
どこかで聞いた。
それはどこかで聞いた台詞だ。
聞いたんじゃなくて、言ったんだ。
一度体が固まってしまったのが解けたので辻くんの顔を見た。にっと笑っていた。
「お人よしで、ちょっと抜けてて、結構変人。なんか変な雰囲気あってさ、俺、あゆみ先輩のこともっと知りたいよ」
興味があるから、もっと知りたい。
私が広瀬くんに言ったそのまんまのことを、辻くんに言われた。私は早く部室に戻って誰かに会いたかったのも忘れて、しばらくその場に立ち尽くしていた。
興味があるって、どういう意味なんだろう。
広瀬くんと同じこと、考えた。
