「あゆみ先輩、こんなところで写真撮んの?なんか色がないよ、色が」
「・・・・・・なんで辻くんが来るの」
「だって行動は自由でしょ?今日はあゆみ先輩と一緒のところにする」
自転車置き場までついて、いよいよ後ろにくっついていた辻くんが離れることもなくここまで来た。辻くんがこうやって私にくっついてきて撮影をすることはめずらしいことではなく、ついていくのが加奈ちゃんだったり他の先輩だったりするのが、今日はたまたま私だった。
「うーん、いまいちだなあ。せめてもうちょっとカラフルな自転車があれば」
「じゃあ場所変えればいいじゃん。私はこの地味な画がいいの」
「なんかあゆみ先輩さあ、俺には冷たくない?」
私は辻くんの話は聞こえないふりをして、ファインダー越しに広瀬くんの自転車を探す。ファインダーと言っても、私のは正真正銘ただの手のひらサイズのデジカメなので、見ているのは四角い液晶。一方の辻くんは、立派なデジタル一眼レフを首から下げていた。なんだかんだ言って辻くんの撮る写真はアーティスティックな雰囲気がある。
「ねえ、あゆみ先輩、さっきの話の続きだけど」
「んー・・・」
「あゆみ先輩って、好きな人とかいないよね?いかにもいない」
「んー・・・」
確か、広瀬くんが自転車を拾うのは、あのあたり。広瀬くんの自転車はシルバーだから、当たりだとしたらあれかあれかなあ。もう帰っちゃってるかもしれないし、わからないけど。そういえばバイトは週3回って言ってたけど、何曜日なんだろう。今度聞いてみよう。
「聞いてる?」
「え、あ、ごめん。何?」
「だからさ、加奈と何の話してたの?俺にも教えて」
「しつこいなあ」
教えて教えてと繰り返す辻くんにしつこいなあと言って、はっとした。私辻くんと同じこと、広瀬くんにしてる。広瀬くんについて、あれはこれはと聞きたいことを聞きまくって、やっぱり広瀬くんも多少はうざいとかしつこいとか感じているはずだ。やっぱり質問はもう少し抑えよう・・・。
