落ち着いてから、健人にはお礼を言った。なぜわかったのか聞いたら、なんてことないように健人は言った。
「朝からずーっと変だったから。放課後なんて特に、顔面そーはく。一目瞭然だったよ、加奈」
一目瞭然なんかじゃない。だって他の人は気づかないくらい、私はうまくやってたもの。健人なんかより、いつも一緒にいる友達だっている、先生だって、隣の席の子だって、誰にも気づかれないで済んでいたのに。
「で?風邪、だったの?」
「・・・。ミントが、死んじゃったの。あの日の、前の日に」
「猫か」
「もう、平気だよ・・・ごめんね、ありがとう」
健人に笑いかけたら、こたえるように笑い返してくれた。その時、心臓がぽっとあたたかくなるような気持ちがしたのは、きっと家族とお別れしてセンチメンタルになっていたからだと、そう思った。
だけど、健人を特別な存在に近付ける出来事が、またすぐに起こる。
