あの子の好きな子




学園祭は一人でぼんやりすることになった。広瀬くんはいないし、友達と一緒に校内を回ることだってできたのに、とてもそんな気になれなかった。次の月曜日が来るまで広瀬くんのことを考えると不安で泣き出してしまいそうで、いつもあとちょっとのところで泣かなかった。

広瀬くんには既に一番大事な女の子がいるかもしれない。ずっとずっとそればかり考えて、私の心臓の色恋担当部分はズタボロになっていたのだ。

「どうだった、学園祭」

月曜の朝、広瀬くんから話しかけてくれた。私はまたもや寝不足だった。この間の寝不足は嬉しい寝不足だけど、今回の寝不足は苦しい寝不足だった。

「・・・広瀬くん、風邪はもういいの」
「え?ああ。1日で治った」
「ああ、そう」
「・・・なんだよお前、どうかしたか」

広瀬くんが私の顔を覗き込む。ものすごくむくんでいるから、あまりしっかり見ないでほしい。ちらりと広瀬くんの顔を見たら、久しぶりに顔が見れた気がして少し嬉しくなった自分が悔しい。

「なにむくれてるんだよ可愛くないな」

広瀬くんのいつもの憎まれ口。でも心臓の一部がズタボロ状態の私には、その一言が変なところに突き刺さる。

「・・・可愛くないよ私はどうせ、華もないし子供っぽいし」
「いやそういう意味じゃなくて。どうしたんだよ、お前」
「別に・・・」

私は、久保さんじゃないし・・・。
当たり前のことを考えた。広瀬くんには、美人できれいな幼馴染がいる。きっと私なんて、はなから眼中になかったんだよね。

どんどん思考がマイナスになっていく。このままじゃまずい。この数日間のもやもやが、爆発しそう。