「ご、ごめん!なんでもない!ごめんなさい」
「え?いいの?お届けもの・・・」
「いいの!本当に!ごめんなさい」
「う、うん」
一度不安に襲われたらそればかりになってしまって、とりあえず一刻も早く一人になって気持ちの整理をつけたかった。久保さんにはわけのわからない思いをさせてしまった。
「じゃあ、あの、ごめんね、それじゃ!」
「あっ、待って!」
久保さんに呼びとめられて振り向いた。改めて見ると、ピンクのエプロン姿がすごく眩しかった。久保さん、美人だよあんた・・・。
「雄也に、伝えておくね、心配してたよって。どうもありがとう」
久保さんはまたきれいに笑ったけど、私には届かなかった。そんな風に、広瀬くんに当然のように毎日会っているんだよって教えられて、不安はさらに大きくなった。平常心ではいられない。久保さんには挙動不審の変な子だと思われたかもしれないけど、私はそれじゃあと言ってその場から去るしかその時はできなかった。広瀬くんのいない学校で、不安ばかりが大きくなる。広瀬くんと二人の学園祭をワクワクして待っていた昨日の私はどこにもいない。もう広瀬くんが何を言っても、不安にしかならない。
ねえ、広瀬くん、彼女いるの?
広瀬くん、好きな人いる?
広瀬くん、久保さんとは、ただの幼馴染?
私、きっとずっと広瀬くんに近い女の子になれたと思ってうぬぼれてたよ。少なくともこの学校の中で広瀬くんに一番近い女の子は私だって思ってた。でも、私が一番なのはせいぜい2年C組の教室の中でだけ。教室を出たら、広瀬くんは誰のことを考えて、誰と一緒にいるんだろう。
久保さんに、広瀬くんを心配してくれてありがとうなんて言われたくなかった。広瀬くんとの仲を教えられた気がして、悲しかった。
