「えっ?あっ。うそ。私寝て・・・」
「ああ、よかった、やっぱり寝てたのか。倒れてるのかと思った」
「ご、ごめんなさい!」

勝手に準備室に忍び込んでおいて、変なところに座っておいて、居眠りまでしてしまった。慌てて立ち上がると、足がじんじんした。髪の毛を整えて、よだれをたらしていないか確認する。そしてまた先生の顔を見たら、おかしそうに笑っていた。

「ごめんなさい、私、あの・・・先生、待ってようかなって思って、すぐ来ると思って、中入っちゃって、それで・・・」
「うん、わかった、わかったよ。鍵、そういえばかけてないなと思ってたんだ」
「びっくりしましたよね、ごめんなさい!ま・・・まさか寝ちゃうなんて・・・本当に・・・」
「まあ、座敷わらしかと思ったけど。元気でよかったよ」

恥ずかしくて、久しぶりの準備室と先生を噛み締める余裕がなかった。時計を見ると、少なくとも一時間はここで眠っていたらしい。大失態だ。

「座れば」
「はい」

それでも、先生が楽しそうにしているから、私は少しほっとした。どういうテンションで接すればいいのかちょっとだけ迷っていたから、こういうハプニングがあって助かったような気もした。先生は、ばさばさと書類を取り出しながら、私に話しかけた。

「なにか用事?」
「あ、いえ・・・あの・・・ごめんなさい、来ただけです」
「そっか」

先生からは、以前のような壁があまり感じられない。用事は何かと聞かれたら、突き放されている感じがして前はもっと寂しくなった。