あの子の好きな子



なんだか悔しい。

「・・・特別じゃないのなんてわかってます。よくわかってるから、おいでなんて言われてびっくりするんじゃないですか」
「・・・・・・ごめん」

先生は下を向いてぽつりと言った。なんだか、先生じゃないみたい。とても学校の先生と話しているような感じはしない。

「いや、あの・・・もう、大丈夫ですけど・・・生意気言ってすみません・・・」

私の方も困惑してしまって、それだけ言ったらどうしていいかわからなくなった。勝手なことを言い過ぎたかもしれない。とにかく調子を取り戻そうと無理矢理笑顔を作って、行きましょうと言って階段を上り始めた。先生は、低い声のまま話し始めた。

「先生、どうもこういうことには鈍くて、ごめんな」
「い、いいんですもう、一人で突っ走ってごめんなさい」
「勉強でわからないことがあったら、いつでも聞いて」
「・・・はい・・・」

勉強で、と強調された気がした。私は努めて明るくして、次準備室に行けるときに少しでも行きやすいようにしようと思った。感情を出してぶつかるといつも失敗する。

「部活さえなければ行きたいんです。最近寒いから、あったかいほうじ茶飲みたいし」
「ああ、最近淹れてないなあ。一人だと思うと余るし」
「え、あ、そ・・・そうですか」
「最近、めっきり来なくなったから、あそこも寂しくなったよ」
「・・・・・・そ・・・」

だからどうして、そんなこと言うの。今日の先生はどこかおかしい。