突然現れなくなった私を、先生はどう思っているだろうか。何とも思っていないか。ほっとしているか。どうしたのかな、ぐらいは思ってくれているだろうか。
先生に会いたい。
授業じゃなくて、準備室で、先生に会いたい。
「日直、日直どこ?プリント、出し忘れたんだけど」
がやがやとした休み時間、私は頬杖をついて考えていた。今日こそ、美咲に野球部には行かないと言ってみようか。とにかく先生と話がしたい。
「日直いないの?理科Bのプリント、誰に渡せばいいの?」
「理科係とか?」
「ないじゃんそんなの」
その時、近くで聞こえた話し声にはっとした。私は、「篠田先生」とか「理科B」とかいう単語が近くで聞こえるとすぐに反応するようにできていた。
「あっ・・・、わた、私、それ持って行く!」
急に立ち上がって大声を出した私に、当人は驚いていた。丁度5階に行く用事があるとかなんとか適当に理由をつけて、そのおつかいを買って出た。まだお弁当を食べ終わっていないのに、お腹が痛いからと言ってさっさと片付けた。残りのお昼休みの時間をすべて先生のために使いたくて、私はどたばたと教室をあとにした。
お昼休みは先生はどこにいるんだろう。たぶん職員室だろうと思ったけど、私はとりあえず準備室から行ってみようと思った。どうかそこにいますように、と祈りながら階段を駆け上がった。先生がいますようにと願いながら階段を上った冬休みの日を思い出していた。そしてあの日と同じように、準備室の扉からは明かりが漏れていた。
