だけど具体的な策はない。というか策を使えるほどの度量もない。結局、少しのもどかしさを感じたまま、1日、また1日と貴重な時間が過ぎていった。こんなペースじゃ先生は振り向かせられないのに、それはわかっているのに、ただ先生と一緒にいられる毎日の幸福さに浸かってしまう。
「え?マネージャー?」
変化があったといえば、寒さがピークを迎えていたあの頃。クラスメイトで同じ部活の友人に突然、野球部のマネージャーを手伝ってほしいと言われた。
「お願い遥香!私一人じゃ心細くてさ、一緒にやろ!」
「いや、私テニス部あるし・・・ていうか美咲もでしょ」
「それがさ、野球部の練習日ってちょうどテニス部の練習日とかぶってないんだよ。マネージャーっていっても、臨時だから、出れる日だけでいいし、試合の日にスコア書きに行くだけでも助かるって」
「え、え?野球部なんて練習毎日でしょ」
「野球部じゃなくて、軟式野球部。硬式と違ってゆるいの。ね、お願い、一緒にやろうよ」
熱烈な勧誘。美咲というその女の子は、このクラスに片想い中の相手がいる。そんでもってその彼は軟式野球部所属。軟式野球部はいまいちマネージャーが定着しないらしく、臨時のマネージャーを欲しているようで、その彼が美咲に話を持ちかけたらしい。好きな人に、マネージャーをやってほしいと言われたら。はあ、そういうことか。
「うーん・・・協力、は、したいけど・・・」
「・・・だめ?」
私の懸案事項は一つだった。部活のない日にすべて予定を入れてしまったら、準備室に行く時間がない。私が何よりも大事にしたいあの時間が、なくなってしまう。私はいきなり、友情と愛情の狭間で揺れることになった。
