横を向いたら、このとき初めて会長を目が合った。会長は少し笑うと、すぐに目を逸らして言った。
「そんな辛そうな顔しないでよ」
私、そんな顔をしてしまったんだ。そう言われて、下を向いてほっぺたをつねった。会長は、ふうと一息深呼吸をすると、また話を始めた。
「でもさ、久保、たまにそういう顔してるときあるよ」
「え?」
「明るいししっかりしてるけど、どっか影があるっていうか。なんか惹きつけるものあると思うよ」
それは・・・
自分の厄介な性格のせいで失敗することが多かったから、自分を抑えるようになったから。それを会長は影があって惹きつけられると言ったけど、別の友人には、私は人を軽蔑していると言われた。受け取る印象なんて紙一重だ。
「そういうところが気になって、見てるうちに、すごく真っ直ぐで、意外と不器用なとことか・・・見えてきて、目が・・・離せなくなったんだけど・・・何言ってるんだろう俺ふられたのに」
会長がまた自嘲気味に笑った。私は今日一番胸が苦しくって、息がうまくできなくなった。
ごめんね、ありがとう。
切なくて苦しくて、私は間違っているんじゃないかと思った。絶対にうまくいかない、100%成就しない恋のために、こんなにいい人を傷付けている自分が本当に正しいのかわからなくなった。それでも、嘘はつけない。自分の根っこのところの頑固さが邪魔をする。
先生への片想いが正しいはずなんて最初からない。それでも、それが正しい自分なんだからと、言い聞かせるしかなかった。
