あの子の好きな子




「人の噂も75日か。75日って結構長いなあ」
「遥香って、なんでそんなにのほほんとしてるの?噂も本当のことにしちゃえばいいじゃん。会長、だめ?」
「・・・・・・」

私は昔から友達に自分の恋愛話を進んですることは少なかった。でも先生への片思いは、本当に誰の一人にも話していない。友達の言葉に何も答えられなくて、私はただ頬杖をついてぼんやりしていた。
75日なんて。そんなにもつはずがない。1,2週間もすればみんな飽きるだろう。1,2週間もすれば・・・

1,2週間もしたら。会長は私に何か、言ってくるだろうか?その瞬間にただ怯えているだけじゃいけないって、わかっているけど。



「ねえ遥香!聞いた?会長の告白宣言!」
「は・・・、は?」

あれからちょうど、1週間と2日め。噂はおさまるどころか、一番の盛り上がりを見せていた。1週間、会長とはおはようぐらいしか会話ができず、放課後は相も変わらず準備室に通いつめて平穏に過ごしていた私にとって、まさに寝耳に水だった。

「えっ聞いてないの?すごい勢いで拡散されてるよ。あんた達の噂、もはやうちのクラスにとどまらないワールドワイドになってきてるからね」
「え・・・ちょっと待って、何が何なの?」
「だから、会長の告白宣言。来週の球技大会でうちのクラスが優勝したら遥香に告白しますっていうやつ」
「え?」

頭のてっぺんのところをトンカチでがつんとやられたような気分だった。何その、ちょっと古臭い青春映画みたいな展開は。本当にそんなこと会長が言ったんだろうか?なんだか勝手に盛りたてられているんじゃないだろうか。そんなことを考えている間にも、今教室の扉のあたりにいる見知らぬ顔の生徒たちがこっちを見てひそひそ話をしている気がする。今、「あれあれあいつ、例の」と聞こえて来た気がする。