あの子の好きな子




もみじ祭りの日は、曇り空だった。時々小雨が降っては止み、降っては止み。そのせいか、例年よりも人出が少なかったように思う。会長とはいつも通りなんてことない話をしながら屋台を回った。雨が降れば傘をさすから、その度に距離ができた。濡れないように急いで食べたあんず飴が酸っぱかった。

「もう1カ月そこらでクリスマスだな」
「うん」

お腹もいっぱいになってしまった帰り道、会長がそんなことを言った。ふたりっきりのお祭りに、終始少しの緊張感はあったものの、まるでいつも通りの会話をするだけだったから、雰囲気はとても和やかだった。それが帰り道のこのセリフで少しどきんとした。何か言われるかもしれない。

「1年、早いな」
「そうだね」
「1年前は、まだ中学生してたもんな」
「そうだね、生徒会長」

話題はクリスマスからそれるかもしれないと少しほっとした。私は何を怯えているんだろう。ただの自意識過剰かもしれない。そう考えていた矢先だった。

「・・・久保は、クリスマスどうするの」
「え?」

今度は思い切りどきんとした。おみやげにさげていた焼きそばの容器が音をたてる。

「別に、決まってないけど・・・友達と・・・パーティーでもしよっかな」

私はきょろきょろと目をそらしながら答えた。本当は、「会長は?」とでも聞いてみればいい場面なのに、会長の顔が見れなくなって、ただスーパー袋をぎゅっと握りしめていた。