あの子の好きな子




もう、引き際を考えた方がいいのだろうか。夏休みの私は、あんなに幸せだったのに。夏が終わって、涼しくなっていって、セミの鳴き声がいつの間にか鳴き止むように、私の気持ちも、風に吹かれてふっとどこかに飛んで行ってしまうみたいに、消えてなくなる。そう思った方がいいのだろうか。

ぶんぶんと首を横に振って、もやもやした気持ちを振り払った。顔を上げて先生を見た。

「先生、私・・・」

そこまで口にして、言葉を止めた。先生を、もっともっと困らせたい。そう思っていたはずなのに、その時の先生の苦しそうな顔を見て、何も言えなくなっていた。

私は、先生を、苦しめている。

「・・・・・・先生・・・、私・・・」
「うん」
「こんな風に・・・ただ、先生に迷惑をかけたかったわけじゃ、なくて・・・」
「・・・うん」

体裁で手に持っていたシャーペンが震えた。先生にとって私の好意が迷惑なことくらいずっと前から百も承知なのに。満点の星空も打ち上げ花火も私にとっては一生忘れられない大切な思い出だけど、先生にとってはなんでもないことで、あといくつ星を数えても、花火を打ち上げても、先生は私のものにはならない。それがよくわかった。

「・・・・・・勝手に頑張るのも、だめですか」
「・・・久保」
「勝手に頑張るのも、先生にとって、そんなに、迷惑ですか・・・」
「久保、そんなことないんだよ」

先生は勉強を教えるみたいに、優しく私の顔を覗き込んだ。