「ざっと説明しなおすと、こんなところかなあ。どう?久保」
「・・・・・・」
「久保?」
「あ、えっと、わかりました」
授業の内容なんて理解したはずもなかった。私は先生の様子を伺いながら、考えた。今までだったら、勉強の話が終わったら、決まって私が話題を変えた。先生に関する個人的な質問や、私の最近の近況であったり、どうでもいいことを話した。それが今、とてもしずらいのはどうしてだろう。先生が作り出す雰囲気なんだろうか。
「今日は、早めに帰らないと、雨足が強まるって聞いたよ」
ほら、来た。私を早く帰らせたい、先生の台詞。新学期になったとたん、先生は私を執拗に遠ざける。もう夢を見るのは終わりだと言いたいんだろうか。
「・・・平気だもん、私、家近いし」
「でも歩きの方が逆に雨がつらいだろ」
「平気だってば」
「あ、そういえば、佐々木はいいの?今日は一緒に帰らないのか」
佐々木。会長のことだ。この間、一緒に帰っているところを見たからそんなことを言うんだろう。あの手この手で私を帰らせようとする先生の言葉に、息が詰まりそうだった。
「・・・帰らないよ」
「そうか」
「そうです」
「付き合ってるわけじゃ・・・」
「付き合ってない」
先生の言葉に被せるように早口で言った。先生は、私が会長と付き合うことを望んでる。私が先生じゃなくて会長を好きになることを望んでる。そしたら、私っていうお荷物がなくなるから。
それが痛いほど伝わってきて、私は唇をきりりと噛んだ。
