先生が提案したその内容は、思っていた以上の、申し分ないものだった。お祭りもだめ、プラネタリウムもだめ、卒アルもだめなのに、なぜ花火大会はOKなんだろう。
「・・・せ、先生が上げるの?それとも花火大会?」
「そりゃ、花火大会だよ。だめかな」
「い、いい!すごくいい!いいの?ありがとう、先生・・・」
先生に会える夏休みも、残り2回。粘っても粘ってもだめだった先生との思い出作りが、ここにきていきなり叶った。諦めないでよかった。しつこくしてよかった。自分の部活動と合わせると、平日はほぼ毎日学校に来た夏休みが、しつこくてみっともなくて必死だった夏休みが、奇跡を叶えてくれた。
「その代わり、いつも通り制服で来るんだよ」
「うん、わかりました。準備室に来ればいいの?」
「ああ」
嬉しくて、嬉しくて、家に帰ってからも、ベッドの中でごろごろと転がった。ばかみたいに浮かれてその日を楽しみにし過ぎた私は、花火大会の当日、肩すかしを食らうことになった。
「花火大会って、これ?」
「そうだよ。河川敷の。まあまあよく見えるだろ?」
いつもの準備室。その奥にある小さな窓。外を見ると、並木道の向こうのアパートとアパートの間から、打ち上げ花火がたんぽぽほどの大きさでかろうじて見えた。
「ここから、見るだけ?」
「そうだよ」
「あの、かろうじて見えるちっちゃい花火を?」
「え、だめだった?学校から見えるなんて、凄くないかな?」
先生は本気で不思議がっていた。私は、一人で肩をがっくり落としてその現実を受け止める準備をしていた。一緒に花火大会に行けるなんて、そんなうまい話があるわけなかった。でもここから見るだけなら、そう言ってくれていれば・・・。
