好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕


「……分かったよ」

和希は口を尖らせながらも、渋々ズボンのポケットをまさぐった。


「あ、忘れた」


「え」


「ごっめん。家に忘れたわ」


ハハハと笑いながら、和希は頭をかいた。

そしてそのままクルっと回って、その場を去ろうとした。


「ちょっ…」

このままサヨナラなんて絶対に駄目!

こんなチャンスない!

「ん?」

「自分のアドくらい覚えてるでしょ?」

「あっ…」