好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕

「あのね、夕方先生から電話があって。パパ、夜に取引先の方とお食事に行く予定だったのにそれをキャンセルして…せーちゃんを待ってたの…」

青ざめたママが、私たちとは少し離れた廊下の隅で呟いた。

「お前はいつもこんな時間までうろついているのか?」

靴棚の横の置時計に目をやった。

時計の針は8時少し過ぎたところを指していた。

「先生から聞いたが、成績が落ちてるんだって?」

「……」