好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕

家のすぐ近くのバス停で降りたときは、もうすっかり空が黒く染まっていた。

寒さも鋭くなって、吐く息が白くなっていた。


「雪が降るのかな」


きんと澄んだ寒さなのに、空には分厚い黒雲が広がっている。


ようやく家にたどり着いて、ノブをひねった瞬間、私は何か物音を感じた。


気にせずに玄関に入ると、黒い壁が目の前に立ちはだかっていて

顔を上げると同時に、真横から頬に激痛が走った。