好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕

「ゆ……き?」

横断歩道に並んでいた人たちの叫び声、悲鳴。

逃げ惑う人、彼女に駆け寄る人、

車のクラクション、段々近くなる救急車のサイレン。


足元は血の海になって

その真ん中で、泳げなくなった魚のように

和希は立ち尽くしていた。