好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕

気持ちの中では、そのまま回れ右して逃げ出したかったが

彼女のことが心配でたまらなかった。

「本当に何も知らないんだ。教えてくれ」

「………」

「俺は彼女が心配でこの家に来たんだ」

「…………昨日」



大通りで信号待ちをしていたときだったという。

夕方の車の多い時間帯で、

歩道にも帰宅の人たちでごった返しでいた。


彼女はいつもより口数少なく、顔を曇らせていた。