好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕

たった一度だけ後をつけた彼女の家を、俺はしっかり覚えていた。

全速力で走って走って

階段を飛ぶように駆け上がった。



ノックして暫く待っても、何の反応もなかった。


ノブをゆっくりひねると、ガチャリという音とともに

ギシギシ音を立てて、ゆっくりドアが開いた。


カーテンが締め切っていて昼間なのに真っ暗な部屋。

少し湿っぽくて、カビ臭さが鼻をくすぐる。


「お前」