好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕

彼女のピアノの才能はとどまるところを知らなかった。

天才という言葉は彼女のためにあると思った。

コンクールも総なめで、先生はよく彼女に留学を薦めた。

「留学なんてできるお金ありません」

彼女はその話が出るたび、きっぱり答えた。



教室が終わってから、淳や美紀なんかの幼児クラスの子たちの面倒を彼女はよく見ていた。

「私、保育士になりたいの」

彼女は、コンクールで賞をとることなんかに興味はなかった。

「授業料も免除してくださるし、先生には悪いんだけど。私はただピアノが好きなだけなの」