好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕

狭くて急な坂道の手前のほうで


コスモスの隙間からかろうじて光の姿が確認できた。


その瞬間、背筋がぞくっとした。



自分の目を奪った男を

自分の弟の彼女が好きになってしまったなんて。


不幸を背負った人間に

これ以上痛みを与えてしまうなんて………


「どうして…よりにもよって…和希なんだよ」


淳は足から崩れるように座り込んだ。