それだけで十分なはずだった。 だけど、もうこれ以上誰にも、何も、言えないのは辛すぎた。 それに、これ以上美紀には嘘をつけない、と思った。 「私、好きな人が出来たんだ」 「え?」 美紀は伏せていた顔を上げて私を見た。 あまりにまっすぐな瞳で。 「美紀のよく知ってる人なの」