好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕

「光さんが外出できるようになったのはつい最近よ」

沈黙の間を埋めるように

美紀が近くに咲いたコスモスの花びらをいじりながら話し始めた。


「目が見えなくなった当時は…本当に死んだように……部屋から閉じこもって出てこなかった」

「………」

「とっても活発で運動が大好きな人だったのに…淳もそんな光さんが大好きだったのに」



「あの頃に戻れたらいいのに」


私は何も言えなかった。


『あの頃』に私は、いるはずもないのだから。