好きで、好きで、好きで、私が私じゃ、無くなる。〔完〕

そのときは何でわざわざ彼女と離れて座っているんだろうとか

あまり深くは考えなかった。


けれど、私がそのベンチに座る彼を見て

全ての謎が解けた。



「君が淳の彼女?」

「………」


すぐそばにあった白い杖を手に持ち

彼は静かに立ち上がった。

白い杖がコンクリートを打ちつけ、カツンカツンと音を立てながら

多分声の向きで私の場所を把握して、すぐそばで立ち止まった。