「今日は春物の撮影をするわよ。
用意した衣装を着てね」
スタッフさんが衣裳部屋に
案内してくれる。
中にはズラーッと春物衣装が
並んでいる。
本当に春だ。
しかも、こんなにあると
何を着るか迷っちゃう。
すると、私の目に可愛い服が
目に留まった。
(これ着てみたいなぁ…)
私がその衣装を触ろうとしたら
横から、誰かに衣装を取られた。
「勝手に触んないでくれる?」
弥紗ちゃんだ…。
また来たんだ。
「アンタにはこれがお似合いよ」
そう言って渡されたのは
本当に地味な茶色い服だった。
飾りも少なく、殺風景だ。
確かに地味な私は
こんなのがお似合いかと思うけど。
私はこんなこと
望んではいなかった。


