ついに私たちは建物の中に入った。
でも入ったのは裏口からだった。

編集長曰く
私たちモデルの視線で舞台の大きさを
確認してほしいのだそうだ。

建物の大きさで何となくわかりそうだけど。


ステージ裏にはたくさんの設備が備わっていた。
休憩所や、食堂。

そしてメイク室は凄く広かった。
おそらく『CROSS』のモデル全員が
子のメイク室に収まることができるだろう。


でも…私まだメイクとかあんまり
うまくできないんだよね。

だからメイク室は私にとってあまり
関係ないかもしれない。


「亜希も可愛いメイクできるわよ~」

突然真後ろにいた姉が
何故か声のトーンを低くして話しかけた。

全然気づかなかった私はドキッとする。


「…美希ねぇ何?」

「メイクが苦手な亜希でも大丈夫っ。
 今回は特別に私がメイクをしてあげる」

「本当に!?」

「普段はダメだけど、今回は特別。
 感謝してよねっ!」


すごく嬉しい。
実は姉のメイクは可愛くて私の憧れだった。
普段の撮影でも、姉は自分でやりなさいって
言われていたけど…。

ようやくこの日がやってきたんだ。
私はわくわくしてきた。