その妖、危険につき


「何泣いてんだよ」

呆れたような廉の声。ああ、もう私、泣いてるんだ。指摘されて、泣いてるってわかってしまうと、ますます涙が止まらなくなる。


「意味わかんねえ」

そう言う声はやっぱり呆れていて、だけど私を胸に抱き寄せる。そのしぐさが優しくて、どうしたらいいのかわからない。


だって、こんなふうに優しくしてくれる腕を、私は知らなかったから。ぬくもりも、優しさも、廉が初めてなんて。

私の命を奪う人に、優しいぬくもりを教わるなんて、馬鹿みたいだ。