その妖、危険につき

「見るなっつっただろ」

強い調子で言われ、思わず身を縮める。と、左側に体がすくむほどの感覚が襲い、悪寒が走った。


「廉、気持ち悪い…」

「殺気にやられたな。絶対左見るなよ」

「…何なの?」

「悪霊って言えばわかるか? よくないものだ。大丈夫だから気にしないで歩け」


廉は私の腰を支えるように歩いた。触れられることへの嫌悪はほとんどない。だって、そんなことに構っていられなかった。家についたときは、ひどくほっとした。