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まだ、夜もあけて間もないころ
一つの寝息と
道場から聞こえる何かと何かがぶつかる乾いた音、
男たちのむさくるしい声が
屯所内から聞こえてきた。
寝息の正体はもちろん奏楽のものである。
しかし、寝ている部屋に迫る気配のせいですぐに目覚めることになるのは、まだ知らない。
その直後----
「!!」
若干の気配を感じ私の眠気は一気に覚めた。
近づいてくる…
まあ、ここは屯所の中だし、襲われたりはしないだろうけど…
迫りくる気配は、奏楽の借りている部屋の前で止まった。
まさか本当に殺されたりしないだろうな…
寝起きの油断しているところを狙って奇襲とか…
返り討ちにしてやる。
すぐに枕元に置いてある愛刀に手を伸ばせるようにする。
「おーい、起きてるか?」
しかし、気配は部屋に入ってこようとしなかった。
「まだ起きてないんじゃね?
旅人には早すぎるだろ。」
「でもなあ、ここでは普通の時間だし・・・
しょうがない、返事がないけど
入ってみるか。」
勝手に入るか?
普通。
とは、思いつつ部屋に入って来るらしいので、一応起き上がる。
襖が開くと同時に見えたのは、二人の男。
「おーい、朝だぞー…
って、起きてんじゃねえか。」
「お、旅人にしては早いじゃん」
「おはようございます。
平助さん。えっと・・・?」
「あ、あぁ。
俺は原田 左之助(ハラダ サノスケ)
朝餉を持ってくるから
準備しといてくれるか?」
「分かりました。」
そう言って、二人は出て行った。
何が朝餉を持ってくる、だ。
こんな早い時間から朝餉なんて・・・
逃げてないかどうかの確認のために
部屋に来たんでしょーが。
・・・屋根裏にも誰か見張り番がいるし。


