母の分の薬代を出していただいて、それでいてそんな我儘・・・」


「本当にすまんな、奏楽が見つかれば
 毎日お前に影武者をやらせずに済むのだが・・・」


「奏楽様のことですが・・・」


「ああ、分かっている。
 奏楽を呼びに行ったお前が1人で帰ってきたんだ。

 ・・・断られたのかい?」


「いえ、断られたわけではありません・・・
 ですが、お屋敷にいたわけでもありませんでした」

その言葉に恭治は目を開いた。


「どういう意味だい?」


「特に、屋敷内を荒らされた様子ではありませんでした。

 ご近所の方に聞いたら旅に出たとかで・・・」


「旅?」


「はい・・・」


恭治は少し考え、


「久佐波(クサナミ)」

と声をかけた。

「およびでしょうか」

すると、どこからともなく50代くらいの男性が現れた。


「奏楽が旅に出たそうだ。行方が分からない。

 探してくれ」


「分かりました・・・」


任務を与えられると久佐波はまた、消えた。