そこで私は目を覚ました。
目尻には涙の跡。
どうやら無意識のうちに泣いていたようだ。

また、あの夢。
最近よく見るなぁ…

私に両親はいない。今まで私を育ててくれた祖父もこの前亡くなった。

そして、亡くなる直前祖父は、

「儂が死んだら、京に行きなさい。
 そして蔵本 恭治(クラモト キョウジ)という
 男を探し、この文を渡すのです。

 その男はお前の叔父にあたる人だ。
 その人に会って。真実を受け止めなさい。」

という言葉を残し、帰らぬ人となった。

そして遺言じみた言葉に従い、
恭治さんを捜しに京まできた。

けれども、京に入ってこれで3日目。
今だに、蔵本恭治という男に会うことができていない。

「…にしても、嫌な夢見たなぁ…」


ふぅ、とため息をつき、辺りを見回すと真っ暗な闇。
まだ、真夜中か。

「2度寝するきにもなれないし、散歩にでも出かけるか」


思い立ったらすぐ行動。
私は出かける準備をし、外に出た。
外はまだ暗くて、あたりは静まり返っていた。


しばらく歩いていると、男達にに刀を向けられた。

卑下だ笑いを浮かべながら刀を向けて来る。


「小僧がこんなところにいるなんて運が
 悪かったな。悪いが死んでもらう。」

その言葉にカチンとくる。

待て待て。確かに袴履いてるけど小僧じゃないし。

と言うか、柄の悪いこの人たちは一体何者?

京の町に辻斬りが出るなんて聞いていない。

はっ、まさか私が第一の被害者⁈

なんて間が悪いの…‼︎

なんて馬鹿なこと考えながら男たちを
無視してそのまま歩く。


「おい待て、小僧!」

男は背中を向けた私に向かって刀を向けてきた走ってきた。
そこで私は、振りかぶってガラ空きの鳩尾目掛けて差したままの刀の鞘をぐっと押した。
見事に的中した男はそのまま前のめりに倒れこむ。

「ぐっ…」


意識のない男を一瞥し、踵を返した。
呆気なくやられた男を見て他の男たちも怯む。


おいおい。あんたらそれでも侍か。
侍だったら、こう、もうちょっと凛々しく、勇ましくだな…


なんて思いながら歩いていたら立て続けに聞こえる、「何か」が地面に倒れる音。


それに嫌な予感を感じに知らない振りして宿に戻ろうとした。


けれども、そんな願い虚しく、さっきの男たちとは比べものにならないくらいの殺気を出す男に刀を突きつけられた。


私の首元に向けられる鋭利な刃物。


…強いなぁ、この人。


唖然とする浪士たちに気づかれないように近づき、一瞬にして絶滅させた。

急所をつくその太刀筋は、見なくても強者のそれだと分かった。


「…………」

「おおっと。逃げないでもらおうか。」



陰に隠れていたのであろうその男は一人だった。