新撰組(仮)




ある屯所の中の一室で。


1人の男が1人の男の前に跪き、
なにやらピリピリとした雰囲気を
醸し出していた。



「…山崎、
 それは本当か??」


「はい。
 鳳紫水の情報は全くありませんでした。」


男は静かに、かつはっきりと言い切った。


聞いていた男の顔が歪む。



「どういうことなんだ」


「恐れながら副長。
 そのものは本当に江戸のものなのですか?」


「どういうことだ?」


「江戸の戸籍を調べてみても、見つからなかったもので…」


「しかし、あいつは確かに江戸だと・・・」


「それともう一つ。
 その者の名は鳳紫水で本当に合っていますか?」



「・・・それは偽名だと?」


「はい。一応、江戸の人に似顔絵を見せて回ったのです。
 すると、似顔絵の人物を知っているという者が
 いたそうです。」


「そいつの名は?」


「名を、水野 奏楽というそうです」


「水野奏楽?」


「はい。」


「で、そいつの情報は?」


「まだです。副長に確かめてからにしようと・・・」


「分かった。
 本人に確かめてみる。
 お前はその間、部屋で休んどけ。」


「ありがとうございます」



そして、黒い影は一瞬にして消えた。



「水野 奏楽、か・・・」




恐れていた事態が、おきてしまったのだ。




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