「あぁ、待って待って。
 僕たちも手伝うよ。
 そんな拗ねないで。」



くすくす笑いながら、女を縄で縛った沖田さんが駆け寄ってくる。

そして、私が立ち上がらせた浪士を、代わりに歩かせる。




「さ、屯所に帰るよ。」



そう言って、ほかの隊士も縄で縛った浪士を連れて沖田さんのあとに続いて歩いた。




「…ありがと、ございます…」



呆然としながら突っ立っている私の横に女を抱えた斎藤さんが立った。


ふと顔を斎藤さんに向けると交わる視線。


そしてふわりと微笑む斎藤さん。



?!?!?!



あの斎藤さんが微笑んだ?!

あの寡黙な斎藤さんが?!

笑うことなんてしない斎藤さんが?!


目をかっぴらいて斎藤さんを凝視する。


女のする顔じゃないって?

知るか、んなもん‼

私は今、貴重な場面に立ち会っているのだ‼




「怪我はないか?鳳。」


「へっ?!
 あ、大丈夫です‼ 
 どこも怪我してません‼」



斎藤さん、優しい…‼

涙がでそう‼


なんて思っていると斎藤さんはさらに目を細めた。


「俺の隊の隊士を助けてくれて助かった。
 礼を言う。」



あぁ、斬られかけた隊士は三番隊の人だったのか。



「お前が仲間だと思うと、心強い。」


"仲間"


一瞬思考が止まる。



「きちんと自己紹介をしていなかったな。
 三番隊隊長の斎藤一だ。
 これからよろしく頼む。」



「…鳳紫水です。
 こちらこそよろしくお願いします。」



仲間…

その一言で、涙が出そうになったのは、秘密である。




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