そして、真実を知ったはずだ。



それで、あんな表情になってしまったというのなら、奏楽にとってその真実が良いものではなかったということだろう。


そう思い、千春は沈んだ。




(奏楽様には、いつまでも笑顔でいてほしかったのに…)




幼少期の奏楽を知る数少ない存在の千春は、奏楽がどのような過去を持っているか知っている。そして、これからも背負って行かねばならない使命も。



それを知っているから、千春は奏楽には笑顔でいてほしいと思っていた。



しかし、現実はそううまくいかなかった。



そのことにもさらに千春は沈んだ。



そんな分かりやすい反応をする千春を齋藤は心配げに見つめていた。


当の千春はそのことにはまったく気が付いていないのだが。




「奏楽、なんかあったのかな。
 明らかに様子がおかしかった」



「大丈夫かな、奏楽…」



全員が心配する中、土方だけがその意見を突っぱねた。




「そうか?

 俺には、決意に満ちた瞳(め)をしてると思ったんだが」



その考えにまた部屋の空気が固まった。