「なんかさっきの奏楽、怖かった…」




2人がいなくなった後に、平助がポツリとつぶやいた。


いきなり無表情で入ってきて、ざっと中を見渡した後、近藤さんと部屋を出て行った。



その冷たい目を見た瞬間、この部屋の空気が凍った。




「別人、みたいだったよな…?」


「あぁ…」



いつもの奏楽じゃないような気がして、声をかけることができなかった。



部屋の空気が沈む中、千春だけはある一つのことに気が付いていた。




(奏楽様の、あの勾玉は…!!)



奏楽の刀の柄がいつもと違っていた。


刀自体に変わりはないが、刀の柄に、ひもがぐるぐる巻きにされ、その紐に通っていた勾玉の存在に千春は気が付いた。



前は、そんなものは奏楽の刀の柄にはついていなかった。



しかも、あの勾玉には覚えがあった。




(あれは、先見の巫女の守護獣が住むと言われるもの。)



歴代の先見の巫女に引き継がれし勾玉。


それが意味することとは----------



(…奏楽様は、恭治様にお会いになった?)