夜の巡察は夕餉が終わってから。


奏楽は今、皆が夕餉を食べているであろう屯所の廊下を歩いていた。




スパーン



奏楽はある部屋の前に来ると、なんの断りもなしに襖を開けた。

中では、幹部以上の者と千春が仲良く夕餉を食べていた。



そんな中、いきなり襖が開いて、一斉に皆の視線が奏楽に集まった。




それを一瞥すると、奏楽は真っ先に近藤のもとに向かった。


そして小声で問うた。



「近藤さん、今少しお時間を頂けないでしょうか」



近藤は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに承諾した。



「では、部屋を移動しましょう」




まだ、近藤さんに私が先見の巫女であるということは伝えない。


その事実が広まることを恐れているのは本当だし。


…でも、もしかしたら私は、自分の居場所をなくすのが怖かっただけなのかもしれない。


私の正体を知って、拒絶されるのが怖かった。
それだけかもしれない。




そんなことを考えながら、奏楽は近藤と共に、部屋を移った。