新撰組(仮)

そして、少し遠い目をするかのように話し出した。



「…奏楽の母様は、私の姉だった。



 とても、綺麗で、聡い人だった。


 姉さんは、とても優しくて色んな輩から求婚を受けたよ。


 恋文も数知れず。



 大量の恋文を抱えて、戸惑っている姉に『そんなの捨てちゃえばいいじゃん』って言ったら
姉さん、笑顔でそれを否定したんだ。」



『私を想って書いてくださったんだもの。


 そんなこと私にはできないわ。』



「…だってさ、参っちゃうよね。


 もらいすぎて困ってたのに、姉さん、優しすぎるから…」


叔父様はやれやれといった感じで肩をすくめた。



「このままでは、ついに結婚できないんじゃないかと父に心配されてね。



 まあ、私はそれでも構わなかったんだけど。



 実際、姉さんは自分の気持ちがどうこうよりも『自分より相応しい人がいるから』っていってそんな恋文も相手にしなかったんだ。」



母様…


どんだけ素晴らしいお人だったの…




「そんな姉さんを射止めたのが義兄さんだった。



 義兄さんもとてもすごい人でね。


 頭脳明晰、眉目秀麗って都の貴公子だったよ。」