今までの疲れがたまっていた平助さんの
背後に滑りぬけ、
気絶させることは簡単にできた。

平助さんの周りに幹部たちが集まっていく。

けど、土方さんだけはまっすぐに私の所に来た。


「お前、どういうつもりだ?」


「どうって・・・
 肩をたたいただけですよ。」


「それでああなると?」


「そんなに強くやった覚えはありません。
 相当疲れていたんじゃないですか?」


「・・・」


しばしの沈黙…


しかし、その沈黙を破ったのは
山南さんだった。


「土方君。」

「山南さん。」


土方さんは睨みつけていた視線を外し、山南さんのもとへと去って行った。



土方さんは山南さんに呼ばれて
山南さんのほうに行ってるし・・・

ここに入れてもらえると
宿代とかかからなくていいから
いいんだけど・・・

ここには忍びの者もいるって
聞いたことがある。
私の正体がばれるのも
時間の問題・・・

だからと言って、京を
離れるのはまずい・・・


はやく、叔父様を探さなくては・・・


「ねえ、紫水ちゃん。」


呼びかけられた声にはっと我に返る。

「え、あ、はい。
 どうかしたんですか?
 沖田さん」


振り向いた先には微笑みを浮かべた(さっき自己紹介で知った)沖田さんがいた。

沖田さんは、さらににっこりと笑みを深くした。

…嫌な予感。


「今度は、僕とやってよ」


「ご遠慮いたします」