「奏楽ちゃん、可愛い!
お姫様みたい!!」
目の前の女の子は私の姿を見て、喜んでいる。
とりあえず、私はお礼を言おうと口を開いた。
しかし、それは遠くから聞こえてきた声に遮られてしまった。
「千春ー」
声のしたほうをみると、そこには一組の男女が立っていた。
20代前半くらいだろうか?
彼らを見ると、目の前の女の子は目を輝かせた。
「父様、母様!!」
女の子----千春はすぐにその二人のもとへと掛けていった。
あぁ、やっぱりこの子は千春なんだ。
3人で何やら話した後、千春は私のほうに笑顔を見せた。
私なんかがまねできない、とても素敵な笑顔を。
「奏楽ちゃん、またね!!」
そういって千春ちゃんは両親2人に手をつながれて、帰っていった。
帰り際に見えた、千春を大事に思う両親の優しい目。
私は、あれを知らない。
ただ、呆然と私は、3人の姿を見送ることしかできなかった。