新撰組(仮)

「姉さんも先見の巫女だ。


 影武者を立てなきゃいけなかった。

 その時に真っ先に候補に挙がったのが幼馴染の弥生殿だった。」


叔父様は下げていた目線を上げて、弱弱しく私に微笑んだ。


「そして、何の因果か弥生殿の娘であり、お前の幼馴染だった千春は母親の仕事を受け継いでそのまま、お前の影武者となった。」



まって、今、叔父様は何と言った?


さらりと流してしまいそうだったけれど、たしかに「幼馴染だった千春は」と言ったはずだ。


幼馴染?
私と、千春が?


知らない。私は。
千春と遊んだことはおろか、幼いころに会った記憶もない。


必死になって過去の記憶を探るが、ある一つのことに気が付いた。





-------私は、幼いころの記憶が一切ない。




一番古い記憶は、私が祖父と一緒にお手玉をして遊んでいること。


それ以前の記憶が全くない。


どういうこと?



「お前には、幼いころの記憶がないんだ。」



必死に考えを巡らせていたがやがて、叔父様の声によって思考は遮断された。


見上げれば、そこには痛々しい微笑みをたたえた叔父様の顔があった。