+ + +
「…警部、予告状のこと、本当に使用人達に知らせなくてよろしいんですか?」
マドック刑事が訊ねた時、トレイシー警部は部屋中に置かれた監視モニターの群れを食い入るように見つめていた。
もちろん他の警官も10人以上でモニターチェックをしているのだが、そこに警官隊のブレインとも呼べるトレイシー警部が加わっているのは、なんだかおかしな光景だった。
「ああ。言い方は悪いが、使用人達は命を狙われ慣れていないからな。
別荘内で一体何人が働いてると思う?
仮に予告状のことを知らせてみろ。全員が保身に走ってパニックになるぞ。そいつだけは避けたい…。
お前も口を滑らせねぇよう気を付けろよ。」
混乱を避けるため。そう主張するトレイシー警部。
だが、何も知らない使用人がもし殺害されたら…?
そう考えると不憫でならない。



